
2025年はAI規制の「転換点」——日本とEUで何が変わったのか
吾輩は西園寺狂太郎。元外資系投資銀行でAI開発に従事し、現在は山奥のプレハブ小屋で自給自足をしながら、細々と情報を追っている者なのだ。君たちは確定申告という言葉を聞いただけで胃が痛くなるだろうが、吾輩も同じなのだ。それはさておき、2025年のAI規制動向は、企業経営者にとって「無視できないレベル」に達している。
2025年、日本ではAI法が全面施行され「AI(人工知能)基本計画」が閣議決定。EUではEU AI法の段階的適用が進み、2026年8月にはハイリスクAI規制が本格適用予定。企業は法務・経営・技術が連携したAIガバナンス構築が急務となっている。
日本におけるAI法制の急速な整備
AI法の全面施行とその特徴
2025年9月1日、AI(人工知能)関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)が全面施行された。この法律の最大の特徴は、罰則規定を設けていない点にある。吾輩が投資銀行時代に叩き込まれた「コンプライアンス・ファースト」の思考からすると、罰則なしの規制など意味があるのかと思ってしまうが、これはイノベーションを阻害しないための設計なのだ。
同法では、国が事業者等の遵守事項を含む指針を整備し、悪質な事案に対して調査・指導・助言を行うことが規定されている。アグリーだ。つまり、自主的な取組みを前提としつつ、必要に応じて行政が介入するというハイブリッド型なのだ。
AI(人工知能)基本計画の4本柱
2025年12月23日には「AI(人工知能)基本計画~「信頼できるAI」による「日本再起」~」が閣議決定された。この計画は以下の4つの基本方針で構成されている。
2026年に注目すべき国内動向
個人情報保護委員会は2026年1月9日、「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しの制度改正方針(案)」を公表した。AI開発における統計情報等の作成について、本人同意を不要とする方向性が検討されている。また、経済的誘因のある悪質な違反行為に対する課徴金制度の整備も検討されている。
さらに、2025年12月26日には内閣府知的財産戦略推進事務局が「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード(仮称)(案)」を公表した。これは「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法を採用したソフトローであり、実務上一定の規律効果を持つ可能性がある。
EU AI法の段階的適用とその影響
2025年に適用開始された規制
2024年に発効したEU AI法は、「リスクベースアプローチ」を採用している。2025年2月2日から禁止AI(unacceptable risk)に該当するAI慣行の禁止が適用され、2025年8月2日には汎用目的AIモデルの規制が適用開始された。
欧州委員会は2025年7月に汎用目的AIモデルのプロバイダー向け「行動規範(Code of Practice)」を公表し、同規範に従うことでEU AI法の要件を満たしていることを示す一つの手段となっている。
2026年に予定される適用開始
ハイリスクAIシステムに関する規制は、附属書IIIにリストされたユースケースについては2026年8月2日、製品の安全コンポーネントまたは製品そのものであるハイリスクAIシステムについては2027年8月2日から適用される予定だ。
限定リスクAIシステムに適用される透明性義務も2026年8月2日から適用が開始される。欧州委員会は2025年12月17日にAI生成コンテンツの透明性に関する行動規範の初稿を公表しており、2026年5月から6月頃に最終版が公表される見込みとされている。
EUデジタルオムニバス法案による見直しの可能性
欧州委員会が2025年11月19日に公表した「EUデジタルオムニバス法案」では、EU AI法の一部規定について見直しを行う可能性が示されている。整合規格やガイドラインの整備状況を踏まえ、特定領域のハイリスクAIシステムについて適用時期を一定期間延期することが検討されているのだ。
各国のAI規制比較
| 法域 | 規制の性質 | 主要な特徴 | 2026年の注目点 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 非罰則型・ソフトロー中心 | AI法全面施行、自主的取組み前提 | 個人情報保護法改正、プリンシプル・コード |
| EU | 包括的・リスクベース | 罰則あり、域外適用あり | ハイリスクAI規制適用開始 |
| 米国 | 連邦包括規制なし | AI行動計画・大統領令で戦略明確化 | 州レベル規制の動向 |
| 中国 | 強規制 | データ管理・トレーサビリティ重視 | 規制執行の厳格化 |
| 韓国・台湾 | 基本法成立 | アジアでの枠組み整備 | 施行状況のモニタリング |
AIガバナンス構築の実践的アプローチ
吾輩が投資銀行時代に学んだことは、規制対応は「コスト」ではなく「競争優位の源泉」になり得るということだ。AIガバナンスの巧拙が事業リスクを左右する局面に入っているのだ。
※上記数値は各種調査を基にした吾輩の推測値であり、公式統計ではない。確定申告の季節になると、こうした数字をまとめるのも胃にくるのだ。
2026年に企業が対応すべき3つの事項
1. AIガバナンスの高度化
AI倫理規程や社内ガイドラインの整備・運用を通じたAIガバナンスの高度化が求められる。これは単なる文書作成ではなく、実効性のある運用体制の構築が重要だ。
2. 海外規制への体系的なコンプライアンス対応
EU AI法をはじめとする域外適用を伴う海外規制への対応が必要だ。特にEU市場に製品・サービスを提供する企業は、ハイリスクAI規制の適用開始に備える必要がある。
3. 継続的なリスクアセスメント
規制・ソフトロー双方を踏まえた継続的なリスクアセスメントが不可欠だ。規制動向は流動的なので、定期的なモニタリングと対応の見直しが必要なのだ。
よくある質問
日本のAI法には罰則がないと聞きましたが、本当ですか?
EU AI法は日本企業にも適用されますか?
2026年に最も注意すべき規制動向は何ですか?
AIガバナンス構築に予算はどのくらい必要ですか?
まとめ——規制対応は「守り」から「攻め」へ
2025年は、日本とEUを中心にAI規制の枠組みが大きく進展した年だった。2026年は、これらの規制が実際に企業活動に影響を与える年になる。吾輩が山奥で自給自足をしながら思うのは、規制は避けるものではなく、適切に対応することで信頼を獲得する機会になるということだ。
法務・経営・技術部門が連携し、実践的なAIガバナンスを構築することが、これからの企業競争力を左右する。アグリーだ。君たちも、確定申告の痛みに耐えながら、AIガバナンスの構築に取り組んでほしいのだ。
参考情報: arakiplaw.com